National Taichung Theater 台中国立歌劇院




ミッション

もしも、この世界のすべてを一筋の川の流れに例えるならば、私は川の流れのなかに出来る渦のような建築をつくりたいと考えてきた。

建築家 伊東豊雄


もしも、台中国立歌劇院がその渦であるのなら、私たちはそこから噴き上がる強大な水柱である。それを引き上げ、
表現することをもって、台湾中部全体にイノベーションを起こしていくのだ。

台中国立歌劇院芸術監督 王文儀

世界が感嘆する、新世紀の文化施設

2014年4月7日に正式に設立された国家表演芸術中心(ナショナル・パフォーミングアーツ・センター)は、台湾のパフォーミングアーツにおける新しい1ページを開きました。



国家表演芸術中心(ナショナル・パフォーミングアーツ・センター)の管轄下には、それぞれ台湾の北・中・南部に位置する「国家両庁院(台北)」、「台中国立歌劇院(台中ナショナルシアター)」、「衛武営国家芸術文化センター(高雄)」といった3つの劇場と、付設団体の「国家交響楽団」があります。国際共同制作の経験を積み、舞台芸術におけるプロフェッショナルなサポートを提供し、暮らしの美学に根づいた教育を行うことを目標としています。文化の肥沃な土壌を耕し、生活の営みそのものをアートへと創造していきます。


1987年に台北の国家両庁院が落成し、運営が開始されました。台中国立歌劇院(国家ナショナルシアター)は、パフォーミングアーツを表現する国家レベルの場として、30年ぶりに両庁院に続き開幕を迎えました。多くの注目を集めたこの新世紀の文化的建造物は、都市の新しいランドマークであるだけでなく、文明の躍進をも象徴しています。


悠久たる歴史と、地域に根差した文化を持つ台中市は、台湾の中部に位置し、多くの文化人を輩出し続けています。20世紀末から、世界があっと驚くトップレベルの文化公演施設を地元に建てたいという、強い野心と想いを胸に、有識者たちは積極的に各界に働きかけ、日々奔走してきました。


2005年の熾烈な国際コンペティションで、13カ国にのぼる強豪設計者の中から、プリツカー受賞者である建築家の伊東豊雄氏が最優秀者として選ばれ、新しい時代を迎える劇場建築の総指揮を担うこととなりました。

建築とは、オペラそのものである

伊東豊雄氏はこのように考えています。自然界は絶え間なく変化している。あらゆる生物も日々変わり続ける。それなのに建築は何故永遠に不動であることを求められるのか?


「私は川の流れのなかに出来る渦のような建築をつくりたいと考えてきた。即ち、変化する川の流れと関係を保ちつつ、流れとは異なる場所をつくりたいのである。」


台中国立歌劇院の曲面の壁や天井によってつくられる空間は、不動で閉ざされた従来のコンサート・ホールの構成を打ち破り、いずれも流動的ではっきりとした境界を持たない、人々の活動を自由にする建築です。


歌劇院はまさに、都市の暮らしに憧れる人々を自由の流れに取り込む、台湾中部に渦巻く水柱です。またアートも、この都市に生きる人々の日常に寄り添い、隅々にまで行きわたっています。


その特殊な構造から、伊東豊雄氏は台中国立歌劇院を「耳で聴く建築である」と喩えています。建物内を歩き、様々な音や響きを耳にすれば、照明と自然光が織りなす豊かな変化のなかで、人それぞれが違う感覚を呼び起こされるでしょう。


当歌劇院はオペラハウス建築にとどまらず、建築物そのものがオペラだといえます。ホールへと続くゲートをくぐれば、類稀なる変幻自在の一幕のオペラへの旅路が待っていることでしょう。


地上6階建ての空間に、大劇場、中劇場、躍動感みなぎるスカイガーデンやシアターショップがあります。地下1階から2階には、ブラック・ボックスの小劇場、リハーサル室、機械室、搬入出用の駐車場があり、そして屋外には噴水広場、側面には野外劇場があります。


コンクリートの曲面壁とガラス製のカーテンウォールが互いに合わさった外観は、「壺中居」をイメージしたものであり、ここを訪れた一人ひとりが、アートの妙に酔いしれ、アートに酔心することへのメタファーとなっています。

大胆に実践 アートでイノベーションを起こす発信基地

歌劇院の運営は、建築と同様に大胆な想像を広げ、果敢に実践する精神を引き継いでいます。生活そのものをアートと捉え、クラシカルでありながら現代的であることを示しています。


人類の歴史とともに、古くから存在している舞台芸術の中には、時を経た今もなお語り継がれている数多くの名作があります。当歌劇院は「アートでイノベーションを起こす発信基地」として、伝統文化と古典芸能をベースに、現代の文脈に芸術的手法をもって、最も素晴らしいプログラムを紹介し、人々の視野を刷新していきます。私たちは故郷で、世界と出会い、世界を知ることができるのです。


国家表演芸術中心(ナショナル・パフォーミングアーツ・センター)の傘下にある3つ劇場は、互いに連携し合うなか、資源の調整と統合をし、コミュニティエリア間のバランスを図ることで、最大限の公益性を発揮することが期待されます。「アート」、「サポート」、「ラーニング」を3館共通の構成理念とし、それぞれ国内外の最先端作品を上演し、最もプロフェッショナルなサポート体制で、芸術文化における教育活動を推進していきます。歌劇院のハードとソフトの両面が互いに作用しあい、大きな文化的な影響力を持つことを目指します。

アート ―地元との連携、コミュニティエリア間のバランス、国際協働

当歌劇院は、地元コミュニティとの連携を図り、地域づくりに寄与する活動を大切にしています 。2015年、開幕に向けたカウントダウン・プロジェクトである『序曲計画』を立ち上げ、地域とのウォーミングアップとして、民俗芸能、伝統戯曲、交響楽団、合唱団といった地元の芸術文化団体が、国際的な作品に参画し、アジアでの数々の初演を果たしました。


現在始動中の「ラウンドテーブル・パートナーシップ・プロジェクト」は、台湾中部で初めてできた、文化芸術交流のためのプラットフォームです。これによって様々なコミュニティがつながり、台湾中部のアート的特色を生かした、多くの協働のきっかけが生まれ、台中をベースに世界へ向けて発信していきます。


国際共同制作」、「芸術文化団体との連携」、「市民参画型のプラットフォーム」といったプロジェクトのもと、地域と世界が協働でつくる様々なプログラムを推進しています。地元の底力を育むことで、美術分野のエキスパートが集い、その波及効果で多くの優秀な人材が台中に再び戻り、台湾中部の永続可能な文化発展に寄与することを期待しています。


当歌劇院は国家表演芸術中心(ナショナル・パフォーミングアーツ・センター)を始め、その他の劇場や団体と緊密に連携し、プログラム資源を共有しています。さらに、国内外のシアターやフェスティバルとの協働を促進し、クオリティの高い演目を共につくり上げていきます。私たちは、厳選されたプログラムで歌劇院の看板作品を打ち出すことで、アーティストの創作と発表の第一候補地として、ここ台中が選ばれることを期待しています。

サポート ―プロフェッショナルな舞台、身近に感じる場所

台中国立歌劇院の責務は、舞台芸術におけるプロフェッショナルなサポートを提供するだけでなく、よりきめ細やかなサービスを市民に提案し、人びとの生活のシーンに寄り添っていくことにあります。


当歌劇院のバックアップ体制は、「プロフェッショナルで使いやすいシアター」を目標とし、スタッフの編成や作業フローの設計などのサポートを行っています。安全を前提とし、高い専門性と柔軟性を併せ持つサービスを提供し、舞台芸術の魅力をさらに極めていきます。


最も観客と触れ合う最前線のステージやパブリックスペースを、「現代都市をノマドするアートスペース」と位置づけ、それらの空間について企画とサポートを行っています。環境と人に配慮したユニバーサルデザインから出発し、建築の伸びやかなラインや空間の動線の中にある、アートの最も素晴らしい一面を提示していきます。


行き届いたきめ細やかなサポートやサービスで、訪れた人々は当歌劇院が誇る最先端のアート、最上級のグルメ、美しいモノや風格のあるライフスタイルを十分に愉しむことができます。

学ぶ ―アートが豊かに花ひらく未来のために、その土壌を深く耕す

教育の推進活動は、アートと人々との距離を縮めるためだけでなく、当歌劇院が次世代とコミュニケーションを交わす約束でもあります。アートの根を伸ばし、その力強いパワーを育んでいくためにも、「歌劇院サロン」講座、公演プログラムの解説やワークショップ、アーティスト・イン・レジデンスといった、多様な表現と観客に合ったイベントを企画していきます。これらの活動プログラムを通して、人々のアートを感知する心の受信機を刺激します。鑑賞者自らが鋭いアンテナを張り、主体的にアートを鑑賞し、アートを享受する喜びを体感していくことを願っています。


文化芸術における教育の推進は、シアターという場で完結するものではなく、地域コミュニティ、里山、キャンパス、企業といった至るところに波及し、広がっていきます。今日撒いたその種が、アートと共に土壌を耕すプロセスを経て、文化芸術が地域に豊かに根づき、花ひらく未来を期待しています。


台中国立歌劇院はハードとソフトの両面において、大胆な想像を広げ、果敢な実践活動で、市民の期待に応えていきます。新しいアートのあり方と独自のスタイルをもって、都市にイノベーションを起こし、台湾中部を刷新していく―これこそが私たちのミッションであり、約束でもあるのです。